春に多く発病

アトピー性皮膚炎と季節の関係はどうでしょうか。日本では、春三月ごろ発病した
り、症状が悪化することが多いようです。前記の太藤先生と上原先生は、数年間、三
月に京都市内で集団検診を行い、湿疹の発生頻度を調べました。
その結果、表のように、乳児(三’七か月児)の一一九%、幼児(三’四歳)の一五%、
学童(小学校高学年)の八%、大学生(十八’一一十歳)の二%に湿疹が認められました。


これらの湿疹性疾患の大多数は、アトピー性皮膚炎の軽症のものと思われます。
アトピー性皮膚炎は、人種や地理的条件とは無関係に発生しています。ただし、文
明の高い環境において発病しやすい傾向があります。たとえば、台湾の人がホノルル
やサンフランシスコに移住すると、台湾に住み続けている子どもらに比べて、アトピ
ー性皮膚炎の発症頻度が高くなります。また、西インド諸島の人がロンドンに移住す
ると、その子どもにはアトピー性皮膚炎が増えるといわれています。
これには、異論がないわけではありません。文明国では、軽症の子でも医者にかか
る率が高いことが影響しているのではないかというのです。


九○年、中国の湖南省で開催された性病学会に出席した折に、中国の中医(漢方医)
の何人かにアトピー性皮膚炎について尋ねましたところ、英語が堪能な医師でも「小
児の内因性湿疹とか慢性湿疹はありますが、アトピー性皮膚炎というのは知りませ
ん」という答えがかえってきました。上海や北京の大都市を含め、中国では顔が赤く
なる成人型のアトピー性皮膚炎はあまりみられないような印象を持ちました。

語源は「奇妙な病気」

二十世紀初めに、アレルギーの基礎的な発見とともにアレルギーの概念が提唱され、その分野の研究が進展しました。クック先生らは、ぜんそくと枯草熱が遺伝的傾向がある病気であることを明らかにし、プラウスニッッ先生とキュストナー先生はぜんそく患者の血清中に特有の抗体(レァギン)が存在することを証明しました。このような免疫学的知見を背景にして、一九二一一一年、クック先生とコカ先生はアトピーの概念を提唱しました。彼らは過敏症を正常型と異常型に分け、健康な人にも見られるアレルギー性接触皮膚炎(かぶれ)などを正常な過敏症とし、異常な過敏症の一型としてアトピーという言葉を初めて使いました。

アトピーとは「奇妙な病気」を意味するギリシャ語の「アトピア」に由来する名称で、遺伝的素因の強いぜんそくと枯草熱がアトピー疾患であると記しています

一九三一年にコカ先生は、アトピー疾患と診断するためには、その病気を引き起こす抗原物質に対する特有の抗体Ⅱレアギンを患者の血清中に証明し、さらにその抗原物質を与えるとその病気と同じ症状を引き起こさせること、すなわち再現できることが重要だと強調しています。

一九一一三年、ザルッバーガー先生らは、古くからベニエ津疹や内因性湿疹など二十種類以上の病名で呼ばれ、乱立していた同義語を統一し、コカ先生らのアトピーの概念にしたがってアトピー性皮膚炎の名称を提案しました。彼らは、アトピー性皮膚炎がアトピー反応によって生じると推測し、アトピー性皮膚炎の特徴として、家族や本人にコカらのいうアトピー疾患の合併率が高く、乳児期に発症することなどをあげています。

さらに検査上の特徴として、多くの皮膚スクラッチあるいは皮内テストで陽性反応を示し、血清中に多くのレアギンが存在する半面、皮膚パッチテストでの陽性率が低いことをあげています。そして、ぜんそくや枯草熱と同じように、皮内テストなどで陽性反応を呈したすべての食物や吸入物質を徹底して除去することで、アトピー性皮層炎は理論上は治せるのではないかと考えました。巧しかし、その後、アトピー性皮膚炎の原因は彼らが推測したような単純なものでは状ないという見方が大勢を占めるようになりました。

ところが一九六六年に、石坂公成先生らによってレァギン活性をもつのが血液中の免疫グロブリンーgEであることが発見されて以来、アトピー説が再燃してきて、アトピー性皮膚炎におけるIgEの検索が、世界各国で盛んに行われるようになりました。

美しい野菜に隠された危険


変皮肉なことですが、現在、アメリカでは和食がブームになっています。なぜ皮肉なのかというと、戦後の食生活を高タンパク・高脂肪に変えたのは、当時、進駐してきたアメリカでした。
脂肪や砂糖を大量に摂取することを教えてくれたのもアメリカ軍だったのです。そのお陰(?)で、日本人の体力は向上しましたが、摂取カロリー過剰になり、肥満、心臓病、高血圧などの成人病を多発させる元にもなったのはご存じのとおりです。
 
そして、低カロリー、ノンファットの究極の食事として何と高カロリー食生活をわが国に提唱したアメリカで和食が大人気となっているのです。
 
戦後、私たちの食生活は大変革をみました。戦中は別にして、日本食の基本は米の炭水化物でした。そしてタンパク質は大豆によって摂取し、動物性タンパク質としての肉などは、せいぜい週に1,2度で、動物性タンパク質は魚が主です。
 

脂肪も月に1,2度の天ぷらで摂取する程度で、脂肪摂取量は現在から比べるとほんの微々たるものでした。
そして現在と違うのは、海藻類、根菜類の摂取が圧倒的に多かったということです。しかも今と違い、野菜の栽培に農薬や化学肥料を用いていないということです。
 
近代農業は、大量生産することで経済効率をよくし、経営としての農業を確立しようとするも
のです。謹則・戦中の農業は効率が悪く、決して経済的には恵まれていませんでした。いや、恵まれないどころか、天候などに左右されていたって不安定なものでした。
 
しかし、農業が近代化されるにつれて、今までの農業では消費者のニーズに応えることができなくなりました。いわゆる都市近郊農業という新しい形の農業が要求されたのです。この都市近郊農業というのは、〃大量生産、低価格、常時供給″というものです。例えば都市でいつも供給が望まれるレタス栽培について見てみましょう。本来ならレタス栽培は、年に1度の収穫、つまり一期作が常識でした。しかし都市住民はいつもレタスを消費します。そのため、春・夏・秋のいわゆる三期作をしなければニーズに追いついていけないのです。

「植物性脂肪は体にいい」というのは本当か?

脂肪について、動物性脂肪のみが悪玉であるように誰もが書き、言ってきました。それでは植物性脂肪は未砺当に善玉なのでしょうか。
私たちが摂取している脂肪には、飽和脂肪酸,と一価不飽和脂肪酸、そしてリノール酸か唇があります。

飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸は、主として動物性の脂肪で、リノール酸は植物性の脂肪です。
ここから「健康には動物性脂肪が悪玉で、植物性脂肪が善玉である」という俗説が誕生したものと考えられます。
しかし、植物性脂肪もよく調べてみると、すべてが善玉だとは言い切れないのです。名古屋市立大学薬学部教授の奥山治美さんは、植物性、とくにリノール酸摂取の仕方に疑問を投げかけています。
奥山先生によると、リノール酸は必須脂肪酸でありコレステロールを下げる作用があるが、意識して摂取する必要はなく、普通の食事の中で充分に摂取されていると言います。そして驚くべきことには、このリノール酸は確かに一時的にコレステロールを下げますが、長いこと摂取するとコレステロールを下げるとは言い切れないということです。そしてリノール酸の摂取過多は、成人病や慢性病の原因になるのだと言います。
言らに奥田先生は、飽和脂肪酸・一価不飽和脂肪酸以外の脂肪を次の2つに分けるべきだと主張されています。その2つとは、
リノール酸Ⅱコーン油、紅花油、マーガリンなど
②αlリノレン酸Ⅱ魚介類、海藻、シソ油、野菜など
で、脂肪は結局この2つということになります。
私たちのリノール酸摂取量は、必要量の約皿倍だと言います。そして子供に至っては、それ以上です。

 

これがガンやアレルギー、心筋梗塞の原因にもなっています。アレルギーの原因ということは、当然、アトピーの原因ともなるのです。そのため、アトピーになっている人は、リノール酸を摂り過ぎてはいけないということです。そしてリノール酸の代わりにαlリノレン酸を積極的に摂取することが必要です。
リノール酸が多い食べ物で、摂取を減らしたいもの、そしてαlリノレン酸が多い食べ物で、どしどし摂取してほしいものです。

このように、植物性脂肪が、すべて健康によいというわけではないことがお分かりのことと思います。

アトピーは、私たちが何の気なしに摂取している食べ物に、その原因になるものがあることを充分に認識してほしいものです。


そしてその中でも、砂糖、脂肪、食塩などがアトピーの原因になるということ、これらをシャットアウトしなければ《アトピーは治らないということを、強く訴えておきます。

 

二次的に生じてきた現象

ところで、アトピー性皮膚炎が接触アレルギーで引き起こされるとするならば、原因となる物質(抗原)を皮膚に塗ってパッチテストをすると陽性になるはずです。と
ころが、ザルッバーガー先生が一九三三年に初めてアトピー性皮膚炎を提唱したとき、アトピー性皮膚炎の基本的特徴の一つとして、多くの接触刺激物を用いたパッチテストで陰性を呈することをあげました。

 
さらに一九三七年、実際に多数のパッチテストを行って、アトピー性皮膚炎では陽性率が低いことを確認しました。その後、一九六○年代になって、アトピー性皮膚炎ではツベルクリン反応や、細菌や真菌抗原に対する皮内遅延型反応、DNCB感作率が低いことが日本や欧米諸国で相次いで観察され、本症の発症機序として細胞性免疫、接触アレルギーを重要視する説に反論する根拠となっています。
 
また、逆に、アトピー性皮膚炎患者の皮膚は一見して皮膚炎がないように見える部分でも、顕微鏡で見るミクロの細胞レベルでは皮膚炎がないとはいいきれず、そこにパッチテストをして陽性を示したとしても、それが原因物質によるのか、もともとあっ
た皮膚炎によるものか、判定は困難とする検査法自体を疑問視する見方もあります。
 
それはさておき、ダーーやカビ類、動物の上皮などの成分によるパッチテストが陽性に出たり、それらに触れたり吸入することによって悪化したアトピー性皮膚炎患者も報告されています。
 
十五年前に京大医学部の太藤先生と上原先生は、アトピー性皮膚炎患者の約六○%がヒト皮垢によるパヅチテストで陽性を示すとし、アトピー性皮膚炎の接触アレルギー原因説を提起しました。このことは、アトピー性皮膚炎の原因物質が生活環境内に存在するばかりか、常に自らの体表面につきまとっているわけで、それが皮膚炎を起
こしたり悪くする可能性を示唆しています。
 

アトピー性皮膚炎とは関係のない一般のかぶれ、接触皮膚炎においても、皮膚炎が広範囲に活発に起こりますと、細胞性免疫機能が二次的に減弱してきます。そこで、アトピー性皮膚炎にみられる細胞性免疫の低下も皮膚炎の結果、二次的に生じてきた現象と考えられ、パッチテストで陽性率が低いのはそのためであるとする見解もあります。

砂糖を断つにはどうすればよいか

アトピーを治すためには、砂糖をシャットアウトしないとダメということはお分かりいただけたと思います。 しかし、食物の中でも砂糖は中毒率が高く、今まで過剰に摂っていた人が急に摂ることをやめると、禁断症状がでてきます。イライラしたり、物事に対してじっくりと取り組めなくなったり、感情的になったりなどです。これはまさに〃麻薬″の禁断症状と同じであることがお分かりでしょう。このように〃怖い食品″を長期に渡って摂り続けてきた人にいきなり「止めろ」とは言えません。また、止めたことでさらにアトピーが悪化することもあるのです。


そこで、砂糖に代わる甘味料が大切になるのですが、きまざまな甘味料が氾濫している中で、私は「オリゴ糖」を強くすすめます。
 その理由を簡単にまとめますと、大きく3つに分けられます。
 ①オリゴ糖が大腸に達すると、腸をきれいにするピフィズス菌の栄養素となる。
 ②オリゴ糖は、血液に溶け込んでも血糖値を上げることがない。
 ③オリゴ糖は、他の甘味料と違い、タンパク質で構成されていないので、アレルゲンとなる可能性がほとんどない。
 この中で①について言えば、大腸は、皮膚に直結している器官で、この大腸が不調であれば皮層にも大きな影響がでます。大腸内の悪玉菌が毒物を作り出し、血液と一緒に体内をかけめぐって皮層に到達します。これが「肌荒れ」の原因になるのです。
 

ピフィズス菌はそうした肌のトラブルを招く悪玉菌の繁殖を制御し、腸内環境をきれいにする働きをもっているのです。ですが、酸に弱いピフィズス菌は、それを直接口に入れても胃酸で死んでしまうという特徴があります。
 オリゴ糖を摂ることで、ピフィズス菌の栄養素となり、増やすことができるのです。
 

また②についてですが、砂糖が血液中に溶け込むと血糖値が上がり、糖尿病患者や高血圧の人にとって大敵です。その点、血糖値を上げることのないオリゴ糖なら安心です。

糖分

糖分はブドウ糖に変化し、脂肪や筋肉に蓄えられます。そしてそれがエネルギーに変換するときには、大量のビタミン日が必要ときれます。ビタミン日はカルシウムを体内に採り入れるために必要になります。ですから糖分の摂りすぎはビタミン日を大量に使うため、カルシウムをとり込むことができなくなり、カルシウム不足を招いてしまいます。カルシウム不足は、前にミネラルのところで述べたように、皮膚病の誘因になりアトピーを助長してしまいますし、精神的にも凶暴になり、ものごとに飽きっぽくなり、対人恐怖症になり、そしてわがままになってしまいます。
 

さらに糖分の摂りすぎは糖尿病を誘発することはどなたもお分かりのことと思います。私たちが糖分を摂取すると、その糖分を必要なときにエネルギー化させるため、筋肉、肝臓などにグリコースとして蓄積されます。
 

このとき、騨臓で分泌されるホルモンのインシュリンが使われるのです。しかし、糖分を過剰に摂るとインシュリンが対応できなくなり、やがて分泌がおろそかになります。すると、体内に摂取されない糖分が血液に入り込んだりそのまま尿となって排池されてしまいます。これが糖尿病。

 

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