語源は「奇妙な病気」

二十世紀初めに、アレルギーの基礎的な発見とともにアレルギーの概念が提唱され、その分野の研究が進展しました。クック先生らは、ぜんそくと枯草熱が遺伝的傾向がある病気であることを明らかにし、プラウスニッッ先生とキュストナー先生はぜんそく患者の血清中に特有の抗体(レァギン)が存在することを証明しました。このような免疫学的知見を背景にして、一九二一一一年、クック先生とコカ先生はアトピーの概念を提唱しました。彼らは過敏症を正常型と異常型に分け、健康な人にも見られるアレルギー性接触皮膚炎(かぶれ)などを正常な過敏症とし、異常な過敏症の一型としてアトピーという言葉を初めて使いました。

アトピーとは「奇妙な病気」を意味するギリシャ語の「アトピア」に由来する名称で、遺伝的素因の強いぜんそくと枯草熱がアトピー疾患であると記しています

一九三一年にコカ先生は、アトピー疾患と診断するためには、その病気を引き起こす抗原物質に対する特有の抗体Ⅱレアギンを患者の血清中に証明し、さらにその抗原物質を与えるとその病気と同じ症状を引き起こさせること、すなわち再現できることが重要だと強調しています。

一九一一三年、ザルッバーガー先生らは、古くからベニエ津疹や内因性湿疹など二十種類以上の病名で呼ばれ、乱立していた同義語を統一し、コカ先生らのアトピーの概念にしたがってアトピー性皮膚炎の名称を提案しました。彼らは、アトピー性皮膚炎がアトピー反応によって生じると推測し、アトピー性皮膚炎の特徴として、家族や本人にコカらのいうアトピー疾患の合併率が高く、乳児期に発症することなどをあげています。

さらに検査上の特徴として、多くの皮膚スクラッチあるいは皮内テストで陽性反応を示し、血清中に多くのレアギンが存在する半面、皮膚パッチテストでの陽性率が低いことをあげています。そして、ぜんそくや枯草熱と同じように、皮内テストなどで陽性反応を呈したすべての食物や吸入物質を徹底して除去することで、アトピー性皮層炎は理論上は治せるのではないかと考えました。巧しかし、その後、アトピー性皮膚炎の原因は彼らが推測したような単純なものでは状ないという見方が大勢を占めるようになりました。

ところが一九六六年に、石坂公成先生らによってレァギン活性をもつのが血液中の免疫グロブリンーgEであることが発見されて以来、アトピー説が再燃してきて、アトピー性皮膚炎におけるIgEの検索が、世界各国で盛んに行われるようになりました。