二次的に生じてきた現象

ところで、アトピー性皮膚炎が接触アレルギーで引き起こされるとするならば、原因となる物質(抗原)を皮膚に塗ってパッチテストをすると陽性になるはずです。と
ころが、ザルッバーガー先生が一九三三年に初めてアトピー性皮膚炎を提唱したとき、アトピー性皮膚炎の基本的特徴の一つとして、多くの接触刺激物を用いたパッチテストで陰性を呈することをあげました。

 
さらに一九三七年、実際に多数のパッチテストを行って、アトピー性皮膚炎では陽性率が低いことを確認しました。その後、一九六○年代になって、アトピー性皮膚炎ではツベルクリン反応や、細菌や真菌抗原に対する皮内遅延型反応、DNCB感作率が低いことが日本や欧米諸国で相次いで観察され、本症の発症機序として細胞性免疫、接触アレルギーを重要視する説に反論する根拠となっています。
 
また、逆に、アトピー性皮膚炎患者の皮膚は一見して皮膚炎がないように見える部分でも、顕微鏡で見るミクロの細胞レベルでは皮膚炎がないとはいいきれず、そこにパッチテストをして陽性を示したとしても、それが原因物質によるのか、もともとあっ
た皮膚炎によるものか、判定は困難とする検査法自体を疑問視する見方もあります。
 
それはさておき、ダーーやカビ類、動物の上皮などの成分によるパッチテストが陽性に出たり、それらに触れたり吸入することによって悪化したアトピー性皮膚炎患者も報告されています。
 
十五年前に京大医学部の太藤先生と上原先生は、アトピー性皮膚炎患者の約六○%がヒト皮垢によるパヅチテストで陽性を示すとし、アトピー性皮膚炎の接触アレルギー原因説を提起しました。このことは、アトピー性皮膚炎の原因物質が生活環境内に存在するばかりか、常に自らの体表面につきまとっているわけで、それが皮膚炎を起
こしたり悪くする可能性を示唆しています。
 

アトピー性皮膚炎とは関係のない一般のかぶれ、接触皮膚炎においても、皮膚炎が広範囲に活発に起こりますと、細胞性免疫機能が二次的に減弱してきます。そこで、アトピー性皮膚炎にみられる細胞性免疫の低下も皮膚炎の結果、二次的に生じてきた現象と考えられ、パッチテストで陽性率が低いのはそのためであるとする見解もあります。