塗り薬

成人型のアトピー性皮膚炎でも、年とともに良くなって行き、五十歳以上のアトピー性皮膚炎は本当にごく少数です。
アトピー性皮膚炎の子どもを診察に連れて来る母親の手がちょっと荒れているようなときに、「おかあさんは小さいころアトピー性皮膚炎があったり、肌が弱かったりといったことはありませんでしたか」と尋ねることがありますが、ほとんど「いいえ」という答えが返って来ます。
このうちの何人かは、きっと子どものころにアトピー性皮膚炎があったと推測されますが、その当時は現在ほど社会的に騒がれていませんでしたし、成長とともに治ってし、まったのでしょう。
実際はどうなのかはさておき、アトピー性皮膚炎が年を追って増えているという指摘があり、そしてそれは大気汚染や住環境の変化、食生活の変化などに伴い、アレルギーを起こす物質が増え続けているという結果にほかならないという警告があります。
いずれも、アトピー性皮膚炎との因果関係は未だ明らかではなく、こういった情報に振り回されることなく、一定の距離を保って受け止めるべきです。

 

典型的なアトピー性皮膚炎は、乳幼児期に発症し、小学校ないし中学校を卒業する十五歳ごろまでには大多数が自然に治っていきます。中には、思春期以降もなかなか良くならない人や、子どものころはなんともなかったのに、大人になってから初めて皮膚症状が出てくる人も見られます。
アトピー性皮膚炎は、普通のかぶれやおできのように治療によってすぐ治ってしまうような類の病気ではなく、良くなったり悪くなったりをくり返しながら、慢性に経過します。ですから、長い目で見て、根気よく治療を続ける心構えが大切です。

 

アトピー性皮膚炎の治療にあたって、もっとも効果があり、そのためによく使われるのが塗り薬です。胃腸や肝臓、肺や心臓などの内臓に病気があるときには、薬を飲んだり注射しないと、内臓の病変部まで薬物成分が到達しません。しかし、皮膚は体表面にあるために薬を塗るだけで効果が得られます。とくにアトピー性皮膚炎のように、皮膚のなかでも表面に近い浅いところに主たる病変がみられる湿疹は、塗り薬が効きやすいのです。
塗り薬は、外からの刺激を遮断して皮膚を保護し、炎症を抑えたり、かゆみを止める効果があります。さらには水分蒸発を促進または抑制したり、かさぶたを取り除くなどの効果があります。

具体的には、ステロイド剤と非ステロイド剤、保湿剤、昔からある古典的な薬剤などがあります。さらに、これらの薬効成分を混ぜ合わせるものによって、軟膏やクリーム、水溶液、ローション、スプレー(フロンガスを含有しない)、テープなどさまざまな製剤が作られています。