ステロイド外用剤

塗り薬のなかで、最もよく効くのがステロイド外用剤です。ヒトの副腎皮質から分泌されるグルココルチコステロイドの誘導体を、湿疹や皮膚炎のある患者に塗り薬として初めて使ったのが一九五二年で、当時としてはそれまでの古典的な薬と比較して素晴らしい治療効果をあげました。


 

それからおよそ四十年がたちました。その間に、より強力な薬理活性をもちながら副作用が少ない外用剤が数多く開発され、さらに軟膏基剤の改良などと相まって著効をおさめ、現在ではアトピー性皮膚炎の治療に不可欠の薬剤となっているといっても過言ではありません。
 
炎症を抑える抗炎症作用やアレルギーを抑える抗アレルギー作用を有するステロイド剤は、強いものから弱いものまで五段階に分かれていて、その種類によって効果もずいぶん違います。最も強い種類のものと、最も弱い種類のものでは四百’五百倍ほど強さが異なります。
 

このように、それぞれの特徴を持った塗り薬を、皮疹の形態やできている部位、年齢、患者の生活環境に応じて、どんな遊びをするのか、大人ならどんな仕事をしているかなども含めて考慮して使い分けます。
 

具体的には、もちろん原則的にはということですが、ステロイド剤を塗るときに、ガサガサと皮膚が厚くなってかゆい慢性の皮膚炎のところには強めのものを使い、逆にそれほど赤くもない軽い湿疹には弱いものを使います。また、角層が厚く、毛穴がないために塗り薬の吸収が少ない手のひらや足の裏には強めのものを使い、皮膚が薄くて経皮吸収量の多い顔や首、陰部などは弱いものを使います。
 

さらに、乳幼児、小児、青壮年、高齢者など、年齢によって使い分けます。良くなったり悪化したりと、再発を繰り返して長期にわたる治療をしかも広範囲に必要とする子どもに、強いステロイド剤を漫然と使い続けますと、経皮吸収されて成長に影響を及ぼす恐れがありますから、中等度から弱いものを選び、また全身作用が少なくて皮膚に対する効果が強いステロイド剤を使うようにします。Ⅲ
 

高齢者の皮膚は薄くて経皮吸収量も多く、機能が衰えて抵抗力も弱いので、強いものは使わないようにして、中等度から弱めのものを使います。;
 

また、男性と女性を比較しますと、一般に女性の方が肌に強い関心を持っていることが多く、これは裏返していえば、早くきれいになりたいという願いが強いということで、塗り薬をつい使い過ぎてしまう傾向があります。とくに顔はそうです。実際は、過ぎたるは及ばざるがごとし、なのですが。こういった女性の心理を考慮することも必要です。
 

また、同じ量を一か月で使う人と、二、三日で使ってしまう人など、かなり個人差もありますので、適切な使用量といったことも考慮します。

 

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