睡眠不足がアトピーを治りにくくしている

アトピー性皮膚炎が治りにくい病気とされる理由の一つに、樺みによる睡眠不足がある。では、なぜ睡眠不足がアトピーを治りにくくするのだろうか。その理由は、睡眠とホルモン分泌の関連にある。
ステロイド剤は、副腎皮質ホルモンの一種である糖質コルチコイドが化学合成されたものであることはすでに説明した。そして、糖質コルチコイドには炎症やアレルギー反応を抑える二次的な作用があった。糖質コルチコイドは、睡眠中の夜中から明け方にかけて最も盛んに分泌される。だいたいの時間を言うと、午後Ⅲ時から午前3時頃である。この理由として、翌日のアレルゲンの攻撃に対し、体内に糖質コルチコイドを行き渡らせて備えておこうとする体のメカニズムが働くと考えられる。この大切な作業が行われる時間に、アトピーの癖みと格闘して睡眠不足になったらどうなるか。
誰でも分かるように、昼間の活動中に使われるはずの糖質コルチコイドの分泌が十分でなくなってしまう。こうなると津みを抑える物質が足りなくなり、翌日はひどい樺みに襲われることになる。眠れないから糖質コルチコイドが不足し、糖質コルチコイド不足から日中の樺みが増し、さらに症状が悪化する悪循環が生じてくる。
病気では、栄養補給と同じくらい、睡眠が重要視される。それは睡眠によって神経系が休むこと、免疫力が調整されることとともに、ホルモン分泌が活発に行われることによる。自然治癒力というのは、神経系、免疫系、ホルモン系のゴールデントライアングルが正常に保たれて初めて、本来の作用を果たすのである。

 


◎掻き壊しがさらにアトピーを治りにくくし、感染症の危険も大きくなる
睡眠不足がアトピーをいかに治りにくくしているか、今の説明でお分かりいただけたと思う。
ところで、アトピーを治りにくくしているもう一つ大きな原因がある。それが、患者さんなら誰でも経験している患部の「掻き壊し」だ。
夜中、ウトウトしているとき、患者さんは無意識のうちに患部を掻き壊している。朝起きたとき、少し良くなりかけたかなと思ったところの皮層が剥がれて出血していたり、掻いたために顔や手足、身体が真っ赤になっていたという話も多い。ひどい人では、シーツやパジャマに血や体液が彦んでいたということもよく聞く。
「寝ている間は掻かないようにしないと」と心に決めても、寝てしまうとこの決意は守りたくても守れない。津ければ自然に手が患部にいき、掻き壊してしまう。これでは、いつまでたっても患部は修復されない。昨日よりは今日、今日よりは明日と皮層はどんどん傷ついて悪化し、炎症を広げることになる。それだけではなく、傷ついた患部から細菌が進入し、思いがけない感染症を誘発する危険もある。