自己流の食事療法は禁物

食事療法は、検査によってアレルゲンが特定されたら、その食品は避ける(除去する)ことになります。そしてそれの代替の食品を食べることになります。ところが除去した食品の代替がなかなか難しいのです。例えば卵がアレルゲンであった場合、鶏肉も食べることができません。そして鶏肉の代替食品として牛肉や豚肉を食べるように言われます。

ところが、アレルゲンが卵だけということはなく、複数のアレルゲンを持つ場合が多いのです。

牛乳がアレルゲンであった場合、牛肉はやはりアレルゲンとなってしまいますから、肉類というと豚肉しか食べられなくなります。
私たち大人の場合、多少、肉類や卵などを制限されたり禁止きれても、それほど痛捧を感じませんが、子供となると問題です。子供は成長するために、大人以上にタンパク質、脂肪、炭水化物、そしてミネラルが必要になってきます。
もし子供が牛乳を始めとする乳製品、牛肉、卵、鶏肉、大豆製品などにアレルゲンを持つということになると、成長を阻害するということになります。この食事療法を成長期の子供に行うということになると、成長障害が起こる可能性が出てきます。そしてこれも前に述べたことですが、食事療法に神経質になるあまり、母親が神経質になってしまい、ストレスがたまってしまいます。
母親がストレスがたまると、子供にもそのイライラが伝染し、それがまた子供のストレスになってしまうという悪影響が出るケースもあります。
大切なことは、食事療法は医師から指示されて行うことになりますから、医師の指示・指導をしっかり守って行うことです。決して自己流では行わないでください。

 

なぜ治りにくいアトピー性皮膚炎は増え続けるのか

◎生活環境の大変化とともに増え続けた子供のアトピー
免疫だの、抗原抗体反応だの、免疫グロブリンだのと最初から少し難しい話になってしまったが、ここまでの話で重要なポイントは次の二つだ。


アトピー性皮膚炎は、垣E抗体が大量に作られることが原因
②大量の垣E抗体は、免疫のズレによって作られる


そして今、子供にも大人にもアトピー性皮膚炎が急増している。その実態を考えると、年齢を問わず、免疫のズレが蔓延していると言わざるをえない。


今でこそアトピー性皮膚炎は現代病を代表する病気の一つになっているものの、側年ほど前まではそれほど騒がれてはいなかった。アトピーが急増したのは1960年代半ばからで、日本が工業立国の階段を駆け上がって高度成長期へ突入していった時期に当たる。
私たちの生活は豊かになったが、その陰で、健康へのマイナス要因がどんどん膨らんでいることには気がつかなかった。

 

たとえば、仕事に追いまくられることによるストレス、人間関係の乳喋、生活時間の不規則化、食生活の欧米化による栄養バランスの崩れ、食品添加物の増加、排煙や排気ガスによる大気汚染、環境汚染による有害物質など、健康へのマイナス要因は挙げればそれこそ切りがない。

 

子供たちは、精神的にも肉体的にも弱者だ。大人と同じような生活環境に置かれれば、子供たちにまず影響が出るのは当然である。子供たちは幼稚園や小学校の受験競争が当たり前になり、大きなストレスにいつもさらされるようになった。同時に、いろいろな有害物質、汚染物質を体内にも取り込んだ。そうした状況から子供たちは免疫のズレを起こすようになり、大量の垣E抗体を作っていった。それが、子供にアトピー性皮膚炎を多発させる原因になったに違いない。

 

ただし、当時、アトピー性皮膚炎になる子供は現代ほど多くはなかったし、「成長すればアトピーは治る」と言われていたように、年齢とともにアトピー性皮膚炎は消えていた。

 

それに比べ、現代はアトピー性皮膚炎になる子供の数が圧倒的に増えているうえ、なかなか治らない子供たちが増えている。その大きな理由として、自然治癒力の低下が考えられる。自然治癒力は、身体に異常が生じたとき、いろいろな機能を総動員して正常な状態に回復しようとする働きである。私たち人間の自然治癒力は、免疫系、神経系、ホルモン系の三つの系統のバランスが取れていて正常に働くようになっている。

 

昔であれば、成長に連れて、子供たちの免疫のズレは自然治癒力のバランスによって修正され、アトピー性皮膚炎も消えていった。しかし、生活環境の激変が、現代の子供たちの自然治癒力全体を弱らせてしまった。それがアトピー脱出の難しい子供を急増させてしまったのではないか、と考えられる。これは非常に大きな問題で、アトピーの子供を持つご両親は、とくに留意していただきたいポイントである。

どんな悪さをしているのか

では、アトピーの患者さんの体内で、増E抗体はどんな悪さをしているのだろうか。
まず、抗原が体内に侵入したとき、ヘルパーT細胞からの刺激で、B細胞は抗体を作り始める。
このとき免疫にズレが生じていると、大量の垣E抗体が作られることになる。作られた垣E抗体は、肥満細胞や好塩基球の表面にある垣Eレセプターと結合する。


 この状態を「感作」というが、これだけではアレルギーは起こらない。この状態はいわばいつアレルギーが起きてもおかしくない臨戦態勢で、同じ抗原が再び体内に入ったときアレルギー症状が起きる。 同じ抗原が体内に入ると、肥満細胞や好塩基球と結びついていた垣E抗体に橋が架けられ、肥満細胞などに刺激が加えられる。その刺激により、肥満細胞や好塩基球からヒスタミンやロイコトリエンといった化学物質が周囲の組織に大量に放出される。このとき、周囲の細胞が持っているH1レセプターがヒスタミンと結合すると、毛細血管の拡張、皮層の腫れ、筋肉の収縮などが起こる。 これらの作用は血管を押し広げ、異物を外に押し出そうとする防衛反応とされている。そして、これらの反応は「かゆみ」の情報として脳に送られる。脳に「かゆい」という情報が送られることで、アトピーの患者さんは猛烈なかゆみを感じる。
I型アレルギーが皮層の樺み、鼻炎、瑞息などの形で現れるには、それなりの理由がある。肥満細胞がこうした場所にしか存在しないことがその理由のようだ。

腸管免疫

私たちの体内に入ってくるものは、肉や魚のような食べ物であろうと、牛乳のような液体であろうと、ホコリであろうと、免疫によって抗体が作られる。しかし、すべてのものに免疫を働かせることは身体にとって異常な状態になり、私たちは生きていくために必要な栄養も摂れなくなってしまう。そこで、食べ物など人体に無害なものには抗体が作られないようにする働きが腸管に備わっており、この働きを「腸管免疫」と言う。
アレルギーを起こす原因に、いくつかの理由が考えられる。まず、腸管免疫の働きがうまくいっていないことがある。また、ヘルパーT細胞が過敏になり、無害な物質が体内に入ってくるたびにB細胞に大量の垣E抗体を作らせてしまうことなども考えられる。
本来であれば起こらないような免疫のズレによって大量の垣E抗体が作られ、それが引き金となってアトピー性皮層炎が発症する。

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アトピーの原因になる垣E抗体はこうして作られる

まず一般に「アレルギー」と言われるものにも、いくつかの型がある。それが、I型、Ⅱ型、Ⅲ型、Ⅳ型の四つのタイプに分けられ、そのうち、I、Ⅱ、Ⅲ型は主に抗体が関係し、Ⅳ型にはT細胞が関わっていることが分かっている。


①I型アレルギー.:…「即時型アレルギー」とか「ァナフィラキシー型アレルギー」とも呼ばれる。垣E抗体が深く関係している。アトピー性皮膚炎や花粉症が代表である。

②Ⅱ型アレルギー:….「細胞障害型アレルギー」とか「細胞刺激型アレルギー」とも呼ばれ、垣M抗体や垣G抗体が関係している。これらの抗体が組織や細胞と結合した結果、組織や細胞が傷つけられて発症する。薬疹、溶血性貧血、血小板減少症などがある。

③Ⅲ型アレルギー…:.「アルサス型アレルギー」とも呼ばれ、垣M抗体や垣G抗体が関係している。抗体がアレルゲン同士を結びつけて免疫複合体を作り、これに白血球の一種である好中球が反応し、組織を傷つける物質を放出することで発症する。皮層の血管炎、全身性エリテマトーデスなどの豚原病がこのアレルギーである。

④Ⅳ型アレルギー……「遅延型アレルギー」とも呼ばれ、アレルゲンがT細胞と反応し、T細胞から放出される物質によって、周囲に炎症を起こす。かぶれやツベルクリン反応がこれになる。

では、アトピー性皮層炎の場合、どういった免疫のズレが根本原因になるのか。
アトピー性皮膚炎を引き起こす原因は、大量に作られる垣Eという抗体である。ここでは、この垣E抗体がどのようにして作られ、アトピーの原因になるのか説明したい。
先に怪我の話をしたが、怪我や呼吸、それに食べ物などから病原菌や異物が体内に侵入すると、マクロファージがこれを発見して食べ始める。マクロファージは「大食細胞」とか「負食細胞」れる。
とも呼ばれる免疫細胞で、異物であれば何でも手当たり次第に食べる性質を持っている。
マクロファージだけで外敵を全滅させられれば、免疫のシステムは働かない。しかし、外敵があまりに多かったり、手ごわかったりすると、マクロファージだけでは対応できなくなり、ヘルパーT細胞に応援を頼むことになる。
このとき、マクロファージは自分が食べた外敵を自分の表面に示すとともに、刺激物質を放出
してヘルパーT細胞を刺激する。ヘルパーT細胞は「免疫の司令塔」とも呼ばれる免疫の要で、ここからが免疫システムの本番になる。
刺激を受けたヘルパーT細胞は、また刺激物質を放出してキラーT細胞やB細胞を刺激する。
キラーT細胞は異物を直接攻撃するが、B細胞は特別の武器を作って異物を攻撃する。このB細胞の作る武器が抗体で、アレルギーの原因になってくる。
抗体は血液中のグロブリンというタンパク質でできており、正確には「免疫グロブリン」という。抗体は「垣」と表されるが、免疫グロブリンが省略されたものだ。
抗体にはA、D、E、M、Gの五種類があり、それぞれ、垣A、垣D、垣E、垣M、垣Gと表される。

アトピー性皮層炎は免疫機能のズレから起こる

現在、アトピー性皮膚炎を始め、アレルギー性結膜炎、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性端息など、アレルギーが原因で発症する病気に悩んでいる人は多い。こうしたアレルギーの人やそのご家族は、ハウスダストやゴミ、ホコリ、食物中のタンパク質などが原因と思っている人も多いが、実はそれだけではない。それらによってアレルギー症状が引き起こされることも確かな事実だが、根本原因は免疫の問題にある。
「免疫って、私たちの健康を守ってくれるんじゃないの」
こう思われることだろうが、私たちの健康を守ってくれる免疫が、実はアレルギーの発症とも深く関係している。免疫にズレが生じると、アレルギーを起こすのだ。そのことから、アレルギーは「免疫の迷走」とか「免疫の暴走」とも呼ばれている。
私たちの身体は病原菌、細菌、ウイルス、毒物など、いろいろな危険に取り囲まれている。空気中には細菌やウイルスが浮かんでいるし、食べ物の中にも大腸菌や異物が混入している。と言っても、呼吸や食事のたびに病気になることはない。それは私たちの身体に、そうしたいろいろな外敵から健康と生命を守るシステムが備わっているからである。そのシステムが、免疫である。
怪我をすると、傷口から細菌などの異物が侵入する。すると、免疫機能は、攻撃物質を作って
細菌を撃退しようとする。侵入しようとする異物を「抗原(アレルゲンと といい、異物に対抗して作られる物質を「抗体」という。抗原が体内に入って抗体が作られる反応が、「抗原抗体反応」と呼ばれる反応である。
普通、抗体は外部から侵入した異物にだけ働き、病気から私たちを守ってくれる。しかし、免疫機能にズレが起きるようになると、私たちにとって無害な物質、あるいは私たちの組織の成分に対しても反応し、異物が体内に入るたびに過剰に抗原抗体反応を繰り返すのがアレルギー疾患である。アレルギーが「免疫の迷走」、あるいは「免疫の暴走」と呼ばれる理由がお分かりいただけただろう。